
2026年2月12日から22日まで開催の第76回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門に『しびれ』が正式出品され、主演の北村匠海、内山拓也監督が参加しました。
上映前の取材に応じた北村は、今回初参加となるベルリン国際映画祭について「初参加となったきっかけの作品が、この『しびれ』という映画で良かった。僕ら演者は映画祭を目指して演技をするわけではないですが、みんなでものすごい愛情を注いで作った映画が、国内だけではなく、国外で評価していただいたこと、そして撮影の時も貴重な時間を過ごしましたが、その時間がさらに広がっているのが嬉しいです」と感慨無量の様子で、「ベルリンの街全体が文化を愛している印象。そんな中で行われている映画祭なので、僕らが愛した映画を僕ら以上に愛してくれているんじゃないかと感じています」とコメントしました。
本作が世界にどう届いて欲しいかという質問については「愛というものは世界共通。世の中には、(主人公の)大地のように傷ついたりしないと誰かを愛せない、真正面から人と向き合えない人生を歩んできた人もいるかもしれない。この映画を通して、大地を目撃していただいて、自分の中に芽生えている愛とは何か、人生とは何かを少しでも感じてもらえる、ドキュメンタリー性を孕んだ映画になっていると思う」とベルリンでのお披露目を前に期待を寄せました。

そして、本作の公式上映が現地時間2月15日(日)に行われ、公式上映前のフォトコールでは、北村が現地のファンのサインにも応じるひと幕も。そして迎えた公式上映。エンドロールが流れると、満席となった会場より大きな拍手が沸き起こり、ベルリン国際映画祭を沸かせました。
万感の表情で、上映後のQ&Aに登壇した監督と北村。内山監督は、演出について最も意識したのは“リアリズムとは何か?”ということだと明かし、「生きている現実と映画のリアルというものは必ずしもイコールではありません。(大地が)さまざまな経験をしていくというリアリティをどう積み上げていくかという部分で、僕は“感情”ではなくて“感覚”を大事にしました。それが今回のタイトル『しびれ』(NUMB)にも繋がっています」と製作経緯を述懐。それらの感覚を大事にするために、「走る」「ものを取る」といった動きを俳優と共に入念にリハーサルしたことを振り返り「そこからこぼれ落ちるところに感情が追いついてくるのではないかと思っていました」と語りました。

そして本作では、幼少期に暴君のような父親の影響で言葉を発することができない主人公の大地というキャラクターを北村匠海、榎本司、加藤庵次、穐本陽月という異なる世代の俳優が演じています。青年期を演じ、壇上で挨拶を求められた北村は第一声で「みなさん、僕の声を聞くのは初めてかと思いますが」とジョークを飛ばし、会場は笑い声と拍手に包まれました。「僕はこの映画にある膨大な余白が、日本映画の良さだと思っています。大地は声を出さない、見ることしかできないという役柄で、僕にとってはその余白をどう泳ぐかが課題でした。何を感じ、何を手に取って、どこを歩くのか、日々撮影するなかで監督と一緒に掴んでいった感覚があります」と監督に絶大な信頼を寄せる北村。
続けて「大地は僕1人で成り立つキャラクターではありませんでした。他の3人とはスケジュールの都合で会えなかったのですが、僕が撮影現場に入ったその日に、撮影クルー全員がそれまで見てきた大地のことを愛おしそうに話していて……。これだけ全員が大地を見守ってきて、支えてきて、歩いてきた現場だったからこそ、彼らがどんな演技をしていたかを話さずとも、僕には3人の歩んできた時間がわかったんです」と振り返りました。
上映後、現地の観客からは「北村さんの、言葉を発さないことによって、逆に激しさを増していく演技に魅了された」「監督の挨拶には、演出に対しての深い思慮を感じた」など様々な反応が寄せられました。




